ドイツ語原詩と日本語訳


交響曲第9番 ニ短調 作品125『歓喜の歌』 (1824.5.7初演、ウィーン・ケルントナートーアTheater am Karntnertor)
原詞:ヨーハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラーJohann Christoph Friedrich von Schiller(1785年初稿と1803年改稿より)
作曲・編詞:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンLudwig van Beethoven(1822から1824年にかけて)
なお、段落ごとの文意で訳しているので、行ごとの対訳ではありません。
An die Freude
「歓喜に寄せて」
O Freunde, nicht diese Töne!
Sondern laßt uns angenehmere
anstimmen und freudenvollere.
おお友よ、
このような悩みに満ちた音楽ではなく
喜びあふれる調べを皆で歌おうではないか!
Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!
喜びよ、きらめくような美しき神々、
楽園より来た乙女よ!
われら炎のごとく酔いしれて
ともに天上の神の神殿におもむかん
Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,
Wo dein sanfter Flügel weilt.
この世で厳しく分け隔てられた者も
神の力によりふたたび結びつけられ、
やさしい翼の憩うところ
すべての人々は兄弟となる
Wem der große Wurf gelungen,
Eines Freundes Freund zu sein,
Wer ein holdes Weib errungen,
Mische seinen Jubel ein!
真の友を得るという
難事をなしとげた者、
貞淑なる女性を妻とした者、
Ja, wer auch nur eine Seele
Sein nennt auf dem Erdenrund!
Und wer's nie gekonnt, der stehle
Weinend sich aus diesem Bund!
そうだ、この世の中で
たとえ一つでも人の心を勝ち得た者は、
ともに喜びの声をあげよ!
そしてそれをなし得なかった者すべて
なきながらこの集いより去って行け。
Freude trinken alle Wesen
An den Brüsten der Natur;
Alle Guten, alle Bösen
Folgen ihrer Rosenspur.
この世のすべてのものは
大自然のふところで喜びを享受する
すべての善なるものも悪なるものも
すばらしきバラの道を歩むのだ。
Küsse gab sie uns und Reben,
Einen Freund, geprüft im Tod;
Wollust ward dem Wurm gegeben,
und der Cherub steht vor Gott.
大自然は、われらに等しくくちづけし
ぶどう酒と、死の試練をこえた友を与える。
そして小さな虫にさえ喜びが与えられ
神の前には天使が現われる。
Froh, wie seine Sonnen fliegen
Durch des Himmels prächt'gen Plan,
Laufet, Brüder, eure Bahn,
Freudig, wie ein Held zum Siegen.
太陽が壮大な天空の軌道を
駆けるが如く
走れ兄弟たちよ、君たちの道を
凱旋の英雄のように喜びに充ちて!
Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!
Brüder, über'm Sternenzelt
Muß ein lieber Vater wohnen.
百万の人々よ、互いに抱き合え!
このくちづけを世界に!
兄弟よ!星のきらめく天上に
必ずや父なる神が住んでいる。
Ihr stürzt nieder, Millionen?
Ahnest du den Schöpfer, Welt?
Such' ihn über'm Sternenzelt!
Über Sternen muß er wohnen.
地にひざまずいたか?
創造主なる神を予感するか、世界よ?
星のきらめく天上に創造主をもとめよ!
そこに必ず創造主は住んでいるのだ。

<つづく>